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衛藤征士郎の訪朝延期をめぐるインタビューを『産経』が報じた。衛藤は「日朝平壌宣言に基づき、拉致、ミサイル、核の諸問題を包括的に解決するということ。もう一点は、会長の私は永住外国人への参政権付与に反対だということ」に言及するのみで、日本の植民地支配責任については、平壌宣言の該当文言にすら言及していない。もはや日本の言論空間から植民地支配責任をめぐる論点そのものが消滅してしまった感がある。
ただ、、『The Voice of Russia(ロシアの声)』が若干気になる記事を掲載した。11月25日付の同紙は、「北朝鮮 植民地支配の賠償 日本に求める」と題し、「労働新聞のなかでは、北朝鮮が繰り返し日本に対して謝罪と賠償を求めているものの、日本政府は過去の日本帝国主義の犯罪を認めることを拒否している、とされている」と報じている。 平壌宣言後の朝鮮政府の日本に対する植民地支配責任追及の方針は、正直なところどう理解してよいか迷うところがある。平壌宣言は、「賠償」どころか一切の請求権の相互放棄を規定しており、仮に朝鮮政府が「賠償」を求めるとなると、平壌宣言の修正が必須である。この記事の通りなら、朝鮮政府は平壌宣言の路線から離れたことになる。しかし、実際にこの記事が根拠とする『労働新聞』2011年11月24日付の論説「必ずや決算されねばならない日帝の朝鮮民族抹殺策動」を見ると、そこには日本に「賠償」を求めるとの表現は無い。論説の該当箇所は以下の通りである。 「実に、日帝が強行した朝鮮民族抹殺策動によりわが人民が被った人的、物的、精神的被害と苦痛は計りがたいほど大きい。しかし日本は、わが人民に対し犯した前代未聞の罪悪に対する謝罪と賠償どころか、あくまで歴史歪曲策動ごっこを展開しており、朝鮮再侵略野望の夢を実現しようと血眼になって暴れまわっている。/日本は罪多き過去を一日も早く清算しなければならない。/万一、日本がわが民族に与えたすすぎがたい罪悪を反省せず、時代錯誤的な反共和国敵対視政策に引き続きこだわるならば、わが人民は百年宿敵日帝の罪の代価を千百倍にして受け取るであろう」「謝罪と賠償どころか」との表現はあるが、日本に「賠償」せよと主張しているわけではない。あくまで「罪多き過去を一日も早く清算しなければならない」と述べるに留まる。『ロシアの声』の位置づけは不正確である。 「9.17」後の『労働新聞』等の朝鮮のメディアは、たびたび日本に「過去の清算」を求めており、ときには「賠償」「補償」の語を用いる場合もある。しかし、繰り返しになるが、朝鮮政府が本当に「賠償」あるいは「補償」を引き出すためには、最低でも平壌宣言の修正が必要である。だが管見の限り、平壌宣言の修正や発展が必要と主張したことはない。このため、私は「9.17」後も朝鮮政府は平壌宣言のラインでの国交「正常化」という基本線を踏み外していないと見ている。日朝交渉が現実に進展すれば「平壌宣言の精神」=請求権相互放棄に立ち戻る可能性が高い。 日本の植民地支配責任の明確化を求める立場からすれば、これは大変深刻な事態である。国交さえ結ばれればいいわけではない。 ▲
by kscykscy
| 2011-11-29 01:02
| 日朝平壌宣言批判
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