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岩波書店宛「要請書」の呼びかけ

以下の「要請書」への賛同を呼びかけます。

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本年4月10日、岩波書店は非常に問題点の多い就業規則を公布しました*。特に、「会社および会社の職員または著者および関係取引先を誹謗もしくは中傷し、または虚偽の風説を流布もしくは宣伝し、会社業務に重大な支障を与えた」場合に解雇の対象となり得るとした点は深刻な問題をはらんでいます。

* この就業規則についての詳細は、「首都圏労働組合 特設ブログ」をご覧ください。なお、同ブログで紹介されているのは案の段階のもので、実際に公布されたものとは若干の違いがありますが、「要請書」で言及している点に関しては変更はありません。また、「要請書」で触れている、金光翔さんに対する以前からの不当な処遇についても、同ブログを参照してください。

この就業規則問題に対し、岩波書店に対し共同で「要請書」(下記)を提出したいと考えております。賛同くださる方は、下記の要領で意思表示をしてください。

どうかよろしくお願いします。

呼びかけ人(50音順):板垣竜太(同志社大学)、鵜飼哲(一橋大学)、愼蒼宇(法政大学)、鄭栄桓(明治学院大学)

※この件に関する問い合わせは、下記のメールアドレスまでお願いします。

【賛同の要領】

「要請書」に賛同いただける方は、次のページで必要事項を記入のうえ送信してください。

なお、第1次の署名集約を5月20日(水)としたいと思います。

【要請文】

要 請 書

 本年4月10日、岩波書店は大幅に改定した就業規則を公布しました。この改定版就業規則の「諭旨解雇または懲戒解雇」の条文(第41条の4)に、適用可能なケースの一つとして、「会社および会社の職員または著者および関係取引先を誹謗もしくは中傷し、または虚偽の風説を流布もしくは宣伝し、会社業務に重大な支障を与えたとき」という項目があります。私たちはこれを看過することができません。というのも、この規則の目的が、岩波書店社員である金光翔さんの、言論活動の封殺にあるのではないかと危惧されるからです。

在日朝鮮人三世の金光翔さんは、岩波書店が発行している『世界』などの「人権」や「平和」を標榜するメディアが佐藤優氏を積極的に起用してきたことについて、「<佐藤優現象>批判」(『インパクション』第160号、2007年11月)その他で問題提起をしてきました。それは佐藤氏が、「国益」や「拉致問題解決」のために外交カードとして在日朝鮮人団体を弾圧してもよいと主張し(金さんの指摘どおり、これでは国家の都合次第で在日朝鮮人の基本的人権を侵害することが許容されてしまいます)、イスラエルの侵略・抑圧行為を擁護するなどの発言を繰り返していたからです。しかし岩波書店側はこの批判的言論に答えず、そればかりか、金さん個人を標的とした民族差別的なハラスメントを繰り返してきました。

この規定で言及されている「著者」が、2012年2月に同社の縁故採用が問題にされた際の見解通りに、雑誌類まで含めて、過去に一度でも寄稿したことのある人すべてを指すものとすれば、その数は膨大なものになるでしょう。たとえば関東大震災における朝鮮人虐殺の事実を否定する工藤美代子氏も、岩波書店の「著者」のひとりです。また、同社の「関係取引先」も、主要な全国紙や多数の地方紙、諸雑誌等が含まれる以上、きわめて広範であることは疑いありません。自社やその社員、「著者」や「関係取引先」への批判が自粛の対象になりうるという認識が社会に広がるようなことがあれば、安倍政権の強権的なメディア介入の圧力下にある日本のジャーナリズムの萎縮傾向に、ますます拍車がかかることは必至です。反動的な「大学改革」の渦中にある大学や各種研究機関の就業規則に、深刻な悪影響を及ぼす可能性も否定できません。

新就業規則が、社員の批判的言論を封殺する効果をもつのみならず、憲法が保障する基本的人権である「言論・表現の自由」を侵害するものであることは明らかです。さらにいえば、このような制度の先例ができたことで、今後、岩波書店内のみならず、在日朝鮮人の研究・言論活動を実質的に「親日的」なものになるように追い込む、無言の圧力がさらに拡大するのではないかと、私たちは危惧しています。

以上の理由から、私たちは岩波書店に、以下の二点を要請します。

一、「会社および会社の職員または著者および関係取引先を誹謗もしくは中傷し、または虚偽の風説を流布もしくは宣伝し、会社業務に重大な支障を与えたとき」を懲戒解雇の対象とする規定をただちに撤回すること

一、基本的人権を侵害するこうした条項が就業規則として効力を持っている間、社員の言論活動等を理由とした同条項の適用をおこなわないこと

by kscykscy | 2015-05-19 00:00
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