<   2016年 02月 ( 1 )   > この月の画像一覧

【紹介】朴裕河「法的責任のドグマから抜け出ねば」(『ハンギョレ』2016年2月5日付)

 朴裕河が歴史修正主義者としての馬脚をあらわした。2016年2月5日付の『ハンギョレ』に掲載された朴裕河「法的責任のドグマから抜け出ねば」のことである。朴裕河はこの「反論」で「日本軍無実論」(永井和)を全面的に受容した自らの日本軍「慰安婦」制度理解を開陳した。『ハンギョレ』日本語版には訳されていないが、朴裕河の認識を示す貴重な素材なので、全訳して紹介する(『ハンギョレ』日本語版に翻訳が載り次第、削除して差し替える)。(追記参照)

 基本的には『帝国の慰安婦』で展開したのと同様の、(1)業者主犯論(=「戦地公娼施設論」)、(2)軍の「よい関与」論、(3)自発的売春婦論、(4)未成年徴集例外論に基づく日本軍の責任否定論である。これらの責任否定論を、自分は多様性を明らかにしただけだ、自分への批判者が売春の前歴がない未成年徴集を強調するのは売春差別意識があるからだ、といった論点のすりかえと、「法」云々の詭弁によってカモフラージュしているのが、以下の「反論」である。

 新しさがあるとすれば、「業者=軍属」論という、自説を根底から覆す主張(事実ならば、軍が直接関与した証拠である)が強調されていることくらいであろう。これは日韓会談で「慰安婦」被害者の個人請求権を韓国政府が放棄した、という主張への私の批判に「反論」するために、朴が最近言い出したことである。(「朴裕河の「反論」を検証する――再論・『帝国の慰安婦』の「方法」について(4)」参照)。この主張を採用することが、従来の自らの主張と矛盾することに朴は気づいていないのだろう。なお「学界」云々の朴の研究史理解は基本的に間違っているので気をつけて読まれたい。

 余裕があれば論評するが、問題点を見抜くのはそう難しくないはずである。結局のところ「慰安所」制度が戦争犯罪だという認識が皆無なのである。ただ、永井の主張が「強制連行」否定論の「論拠」にされてしまっているのはあまりに気の毒である。おそらく本人が読んだら仰天するのではないだろうか。朴裕河の仕事は一事が万事この調子だから、引用された者はいい迷惑である。なお、史料引用らしき「」内の文言は、いずれも不正確であるため[ママ]とした。読みやすさを考えて適宜改行してある。

追記(2/12)

 『ハンギョレ』日本語版に記事が掲載されたので、翻訳は削除した。引用などの際は下記を参照されたい。


by kscykscy | 2016-02-09 00:00 | 歴史と人民の屑箱