民主党の植民地主義的再入国許可制度再編案

 前回触れた民主党の「在日朝鮮人に対する再入国許可禁止」という「制裁」案について、もう少し詳しく検討したい。植民地支配責任という観点からも、これは相当深刻な問題だからだ。

 現在の入管法、入管特例法は永住・特別永住資格を持つ外国人に対し、日本国外への一時渡航に際して再入国許可を得ることを義務づけている。この「再入国許可制度」については、大きく二つの立場からの批判がある。一つは在日朝鮮人団体が繰り返し主張してきたもので、人権論の見地からの批判。そしてもう一つは、いわゆる「規制緩和」の立場から、商用の外国人にとってこの制度は不合理で非効率であるという批判である。前者について政府はほとんど聞く耳を持ってこなかったが、後者の批判があるため、一時は新たな在留管理制度のもとで撤廃かとの観測もあった。

 だが一方で日本政府は、例えば朝鮮のミサイル発射実験以後の措置の一つに「在日の北朝鮮当局の職員による北朝鮮を渡航先とした再入国は原則として認めない」という項目を入れており、この再入国許可制度を対朝鮮制裁の手段として最大限活用している。

 しかし、今回報道されている民主党案は、渡航先や渡航主体の限定無しの「在日朝鮮人に対する再入国許可禁止」をうたっており、どう考えてもその適用範囲は政府の「制裁」措置よりもはるかに広い。ただ、こうした広範囲な再入国許可禁止案は決して新しいものではなく、2004年にいわゆる「西村眞吾私案」として拉致議連内で議論されたことがある。この「西村私案」は、一言でいえば入管特例法の改悪案なのだが、その内容は以下の通りだ。

 法務大臣は、特別永住者で次の各号のいずれかに該当するものに対しては、入管法第
二十六条第一項の規定による再入国の許可を与えない。

一 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主
張し、又はこれを企て若しくは主張する団体を結成し、若しくはこれに加入している者
二 前号に規定する団体の目的を達するため、印刷物、映画その他の文書図画を作成
し、頒布し、又は展示することを企てる者
三 前二号に掲げる者を除くほか、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する
行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者


 以上の項目を、入管特例法の第十条(再入国の許可の有効期間の特例等)に付け加えるとしている。ここに挙げられた三項目は、いずれも入管法第五条に定められた上陸拒否事由(十一号、十三号、十四号)で、それをそのまま再入国許可にあてはめようというのが、この「西村私案」の狙いである。現在、入管特例法は上陸審査の特例を設けているが、入国時の上陸拒否事由の審査から除外しているが、それを特別永住者にも適用しようというのである。

  西村自身はすでに民主党ではないが、過去のものを見る限りおそらく民主党案の「在日朝鮮人に対する再入国許可禁止」というのは、この「西村私案」と同様のものと推測される。つまり、入管特例法改悪を通じた特別永住許可者の再入国許可制限、あるいはそれに準じた措置を政府が「追加制裁」として取る、というやり方である。これならば「規制緩和」論者(海外含む)から評判の悪い再入国許可制度そのものは緩和するとしても、その多くが在日朝鮮人である特別永住者に対し在留規制をかけることができる。

 現行の再入国許可制度は、法の形式としては米国式の入管法に基づいているが、その実態においては、明らかに「一時帰鮮証明書」制度などの植民地期における在「内地」朝鮮人渡航規制との連続があると思われる。そう考えるならば、「西村私案」そして民主党案は、植民地民渡航規制という「本来の」あり方に、再入国許可制度を戻すものともいえるだろう。植民地時代の統治技術を今も日本政府が捨てきれないからこそ、再入国許可制度は維持されるのだ。

 昨今の在日朝鮮人団体に対する弾圧といい、この植民地主義的再入国許可制度の再編案といい、国交正常化交渉を前に、国内における朝鮮人支配体制の強化を平行してやっていくというのが、「侵略責任継承国」日本のやり方なのである。
by kscykscy | 2008-11-08 01:06 | 出入国/在留管理
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