8月25日付『民団新聞』に掲載された「団体役員」李敬成の「民論団論 朝鮮高校無償化問題」という論説が凄まじい。まずは以下の文章を読んでいただきたい。
「朝鮮高校に対する無償化適用問題は、自国民の命を犠牲にして核を含む大量殺戮兵器を開発し、豪勢な生活をほしいままにしてきた世襲独裁政権に盲従を強いる同校の教育内容に、改めてメスを入れた。同時に、韓国籍を取得した後も朝総連組織に属して何らかの活動をする、いわゆる《偽装韓国籍者》が多数存在する事実をあぶり出した。この論説で李敬成が主張していることをまとめるならば、1.朝鮮学校に通わせる韓国籍の父母には「韓国籍を取得した後も朝総連組織に属して何らかの活動をする」「偽装韓国籍者」が多数いる、2.「偽装韓国籍者」は韓国の実定法に違反している、3.韓国当局が近年「偽装韓国籍者」の調査を試みており、これが進めば「韓国入国や外国旅行の際に不便をかこつことにな」り、望ましい、よって日本政府は「韓国籍者も通っている」などという主張に惑わされず、絶対に朝鮮学校を「無償化」から除外するべきだ、となる。 私は、朝鮮学校「無償化」排除の問題が起こった当初から、一声でも他の外国人学校から排除批判があがればと願っていた。もちろん、この問題に最大の責任を負うのは日本国民なのであるし、他の外国人学校が朝鮮学校を擁護して巻き添えをくいたくないと考えるのも、日本社会の排外的現実を考えれば責められるものではない。だが民団系の韓国学校は、単なる外国人学校というだけではなく、植民地支配の結果、日本に渡らざるを得なかった朝鮮人たちが民族教育のために作った学校であるという歴史的共通性を有しているのであるから、どんな立場からであれ一言排除批判の声があってしかるべきなのではないかと考えていた。 ところがようやく出た論説がこれである。巻き添えをくいたくないから黙っているどころの話ではない。韓国国内の保守系メディアでもここまでは書いていない。「偽装韓国籍」云々についてはすでに李英和らが同趣旨のことを述べたことが『産経新聞』紙上で紹介されていたが、今回の『民団新聞』の論説は、少なくない在日朝鮮人を網羅する民族団体が、公然と朝鮮学校「無償化」除外擁護論を掲載したという点で画期的だといえる。 李敬成がここで「韓国籍でありながら北韓及び朝総連の指示を受けて運営される学校に子どもを通わせる父母たちは、韓国の実定法に違反している」というときの「実定法」とは、悪名高い韓国の治安法たる国家保安法を指している。確かに韓国の裁判所は、国家保安法に基き朝鮮総連を「反国家団体」と指定しているが、それは1971年、つまり朴正煕政権期の判例である。李敬成は独裁政権時代の古い遺物を引きずり出し、在日朝鮮人の韓国籍者の思想・行状調査を行い、韓国入国を制限せよと主張しているのである。そうすれば韓国籍者は朝鮮学校に子供を通わせなくなるだろう、と。 だがこうした李敬成の主張を韓国政府が実行することになれば、それこそ深刻な人権侵害を引き起こす。大韓民国憲法は第14条で国民の居住・移転の自由を定めており、また、第21条は同じく国民が言論・出版の自由と集会・結社の自由を有することを定めている。韓国政府が韓国籍在日朝鮮人の思想・行状を調査し、その結果として韓国入国を制限することは、明白に韓国憲法に違反する。李敬成は国家保安法を盾に、公然と韓国憲法を踏みにじることを政府に求めているが、そもそも国家保安法そのものが違憲の可能性が極めて高い。一治安法にすぎない国家保安法が、半世紀のあいだ憲法より上位に君臨してきた歴史を、李は再び現代に甦らせようとしているのである。 なんとも情けないのは、こうした反共的な「偽装韓国籍」調査云々の理屈で、日本政府の朝鮮学校「無償化」排除を擁護していることである。李敬成は威勢こそいいが、何のことはない、現に日本政府が行なっている差別を追認し、そのおこぼれにあずかろうとしているだけではないか。この論説はぜひとも歴史に記録しておくべきである。
by kscykscy
| 2010-09-01 01:16
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