再び天皇訪韓と和田春樹、そして「鳩山談話」について

 ここにきて、李明博大統領が再び天皇訪韓を口にしだした。韓国併合百年を期に、天皇訪韓によって「歴史問題の完全解決」を図ろう、ということらしい。韓国メディアも保守系は概ね好意的だ。進歩系も明日には社説やオピニオンが出るだろう。

  まず確認しておくが、私はいかなる条件・いかなる時期であろうとも、天皇が「天皇」として朝鮮半島に行くのには反対である。理由についてはここを読んでいただきたい。
     和田春樹の天皇訪韓提案と「東アジア共同体」

 早速「中央日報」のコメント欄あたりにたむろする天皇主義者たち(ネット右翼、という呼び名は生ぬるいと思う)は騒ぎ始めており、なかには「日本の皇室外交に政治を持ち込むな」という珍妙な批判もあって笑えるのだが、とりあえずはどうでもいい(皇室外交は政治ではない、というのはなかなか天皇制っぽくて味わい深い)。

 ただ、安重根のような人間に暗殺されるから天皇を韓国に行かしてはならない、という類の意見は、天皇がただ朝鮮に上陸しただけで殺されるかもしれないような存在であるということが前提になっていて逆に「不敬」なんじゃないかとすら思うのだが、その理解についてだけは私も同感である(もちろん、それは朝鮮人の頭がおかしいせいになっているのだが)。

 しかし、あれを「反日カード」だと呼ぶのは間違いである。大して「反日」ではないものをことさらに「反日」だと名指して、逆に「反日」の価値暴落を引き起こそうとする高等戦術なのかもしれないが、最大限好意的に解釈して天皇訪韓要請の思想的意味は、もはや日本が絶対に天皇制を無くすことはないし、日本人が変化することもない、という諦念に基いた政治的リアリズム(ニヒリズム?)に過ぎない。普通に考えたら、李明博の訪韓要請は単なる「親日」行為である。安重根が生きていたらまずは李明博を射殺するだろう。

 それはさておき本題は和田春樹である。この件(といっても併合100年の方だが)に関連して『ハンギョレ』で再び和田春樹が発言している。とりあえず引用しよう。

 8・30総選挙の結果は『ハンギョレ』が書いたように選挙革命に近かった。今までの自民党政治とは異なる政治を示さねばという日本国民の願いの結果である。特に、去る95年には村山談話があったが充分ではない面があったので、果敢に新たに書き直すことを期待する。来年の韓日強制併合100年という絶好の機会を活かし、声明を出さねばならない。まさしく「鳩山総理談話」である。韓国人の心を掴むためには村山談話では解決されていない、併合は当初より無効という韓国の主張に対し応えなければならない。そうした余地があると思う。このために日本で努力したい。

 「鳩山談話」が出るそうだ。いや、出すそうだ。もういい加減にして欲しいのだが、この記事には続きがある。

 鳩山総理は客観的に直面することになる100周年問題に対し、何らかのかたちで応えるだろうと思う。それは韓国のみならず北朝鮮に関連する問題だ。北朝鮮側では100周年問題について鳩山政権が言及するならば、日本側との関係改善に積極的になるだろう。北朝鮮を動かすためにはまずは過去に対する反省が必要である。このためには日韓条約のような日北〔ママ〕条約が必要である。それは北朝鮮には大きな魅力である。

 日韓条約のような日朝条約が必要なのだそうだ。まだまだ続く。

 日本国民も過去とは異なり新たな方向へと進むことを期待しているため、日本のナショナリズムは大きな問題ではない。この問題を解決しようとする日本知識人たちも多いと思う。年末までには歴史問題に関連する声明が出るだろう。

 日本のナショナリズムもさしたる問題ではないとのことである。根拠は不明であるが。そして最後、

 『朝日新聞』による去る19日の民主党出馬者に対する調査結果を見ると、憲法改正、防衛力増強、集団的自衛権行使問題などに対しは穏健派が圧倒的に多い。自民党候補のなかでは95%が平和憲法改正に対して賛成だが、民主党候補者のなかでは40%だった。4年前の民主党候補者調査では70%に達した項目である。こうした人物たちを選択したのが小沢一郎民主党幹事長だということに注目する必要がある。小沢に対しては様々な評価があるが「自民党と異なる政治」をするために当分の間は穏健派を公薦した。彼は戦略的な思考を持っている。対北政策と関連する問題は、鳩山総理にかかっている。歴史問題・補償問題については積極的な考えである。彼は軍隊慰安婦問題解決法案を提出した議員のうちの一人だ。ただ、鳩山総理が北朝鮮問題と関連して、就任したらすぐ船舶調査法案を通過させると言って来たが、これは中止した方がいいと思う。はじめから北朝鮮との関係を悪化させてはいけない。

 以上である。とりあえず「鳩山談話」と知識人らの「歴史問題に関連する声明」を出そうと画策しているようなので、最大限警戒しよう、と呼びかけておきたい。ただ、私が心底腹立たしく思うのは、最後に引用した部分である。

 少なくとも民主党選挙勝利後の韓国メディアの大勢は、当分は日本の外交に大きな変化は無いだろう、というものだったと記憶している。私も正しい判断だと思う。そこにわざわざ改憲派は40%しかいないだの、それは小沢の「戦略的思考」だの、鳩山が「歴史問題・補償問題については積極的」だのといって、民主党外交に変化の兆しがあるかのように韓国世論を誘導するのはどういうことか。何より、それを掲載する(依頼もしたのだろう)『ハンギョレ』は一体どうなっているのだろうか。大体、改憲派が40%しかいないから安心しろ、というのは人を馬鹿にするにもほどがあるのではないか。民主党と自民党を足したら容易に改憲できるから警戒すべし、となるのが普通の判断だろう。仮にも「歴史問題・補償問題」の「解決」を望むならば、周辺諸国の厳しい監視は絶対に必要である。それを緩和させてどうしようというのか。

 ここでは天皇訪韓については言及は無かったが、おそらく李明博とは若干違うラインで和田は主張することになると思う。流石に李明博と同一のレトリックではやらないだろうし、そういうところにより根深い問題があるとも思うのだが、韓国に対しては「警戒せよ」と声を大にして言いたい。

 しかし困ったことに web版9月16日付の『ハンギョレ』の社説を見ると、ほとんど和田春樹そのままのことが書いてある。憂鬱だが引用しよう。

 鳩山政権は以前の自民党政権とは異なり、過去事問題に前進的な姿勢を見せている。名実相伴う韓日友好を実現するにあたり、極めて肯定的な部分である。鳩山総理は靖国神社参拝をしないと明確にした。また民主党は韓国人軍隊慰安婦補償と在日同胞地方参政権付与問題にも積極性を見せている。事案の性格上根本的に解決するのが難しい独島問題を除けば、過去事問題には最も好意的な政権が誕生したことになる。小沢一郎民主党幹事長と岡田克也外相など党政の核心に韓国・中国など隣国との友好関係を重視する人物が布陣されている事実も注目される。

 『ハンギョレ』もまた、和田春樹と、そして村山社会党と同じ道を歩むのだろうか。もう歩んでいるのかもしれない。もう手遅れかもしれないが、声を大にして「そっちは行き止まりだ!!」と呼びかけたい。
by kscykscy | 2009-09-17 07:58 | 日朝関係
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