入管法・入管特例法改悪案と「有効な旅券」

 産経新聞が伝えているように、三月六日、政府は入管法及び入管特例法の改正案を閣議決定した。現在配布されている入管法及び入管特例法改正案要綱に、その主たる内容が掲載されているが、これが相当にひどい。

 第一に、すでに言われていたように、入管法適用対象者には在留カードの、入管特例法適用対象者には特別永住者証明書の常時携帯義務が課され、前者については不受領、不呈示、不携帯、すべてに懲役及び罰金等の刑事罰が課され、後者は常時携帯義務違反については過料に処するとし、それ以外には懲役及び罰金等の刑事罰が、課されるとされている。罰則規定が形を変えて維持されたといえる。これについては改めて検討したい。
 
 第二は、「再入国許可」に関わることである。これについて今回の法律案要綱は、「みなし再入国許可」という名の一部「再入国許可」取得免除を定めている。原文は以下の通り。

  第九 再入国許可の有効期限の伸張に関する規定及びみなし再入国許可に関する規定の整備
 二 みなし再入国許可
 1 本邦に在留資格をもって在留する外国人(中略)で有効な旅券(第六十一条の二の十二第一項に規定する難民旅行証明書を除く)を所持するもの(中長期在留者にあっては、在留カードを所持するものに限る。)が、法務省令で定めるところにより、入国審査官に対し、再び入国する意図を表明して出国するときは、第二十六条第一項の規定にかかわらず、再入国の許可を受けたものとみなすものとし、ただし、出入国の公正な管理のため再入国の許可を要する者として法務省令で定める者については、この限りではないものとすること。
 

 また、特別永住者について「第九の二は、有効な旅券及び特別永住者証明書を所持して出国する特別永住者について準用することとし」とも記されており、特別永住者を含む全外国人に対する「みなし再入国」の内容がここに示されている。そもそも「再入国許可」とはいうものの、これは政府が外国人の再入国の許可権限を掌握しているという意味なので、実態は「再入国規制制度」であり、この権限を放棄しないために「みなし再入国許可」なる名前をつけていること自体問題である。
 
  ただ、より深刻なのは、これの対象となるのが「有効な旅券を所持するもの」に限定されていることである。日本には「有効な旅券」を所持しない者が多数住んでおり、代表的なのは朝鮮籍あるいは韓国に国民登録をしていない韓国籍の在日朝鮮人である。朝鮮民主主義人民共和国の旅券について日本政府は「有効な旅券」ではないとしているので、両者はこの「みなし再入国許可」なるものの適用対象外となる。逆に言えば、朝鮮人のうちこの「みなし再入国許可」の対象となるのは、韓国旅券保持者だけである。ちなみに、日本政府は国交の無い台湾やパレスチナについては、その旅券は「有効な旅券」であると認めている。

 以前、「再入国許可制度」については欧米からも批判が多く、規制緩和の観点から撤廃の声が高まっており、おそらく政府としては在日朝鮮人に対する再入国規制を維持しつつ、外国人一般に対する再入国規制緩和を行うため、民主党の出してきた入管特例法に限定した再入国規制案を採用する可能性が高い、と書いた

 この予想は半ば当たり、半ば外れたといえる。やはり日本政府としては、外国人一般の再入国規制緩和と、在日朝鮮人に対する再入国規制を何とか両立させたいと考えていたといえる。これが「半ば当たり」である。だが外れたのは、「有効な旅券を所持するもの」という規定をいれたことにより、民主党案よりも明確に狙いを定めたかたちで、外国人一般に対する再入国規制緩和と、朝鮮人に対する再入国規制を両立させたことである。しかも、これならば入管特例法適用対象者の在日朝鮮人のうち韓国旅券所持者には再入国規制の緩和を出来るので、日韓関係上も問題が生じない。驚くべき官僚的屁理屈である。

 逆に、今回の法律案要綱が旅券を所持しない朝鮮人に対する再入国規制に特化されたことによって、再入国規制制度の「植民地主義」的な側面はむしろ強まったといえる。最悪の展開であるといえるだろう。
by kscykscy | 2009-03-07 18:03 | 出入国/在留管理
<< 世界「共同提言」と日朝平壌宣言 「共同提言 対北政策の転換を」... >>